あたしたちはいいこでなくちゃいけないの。
あの子たちは集団で媚を売る。
雪に降られて、いたいけでしょう、あたしたち。
こんなにうつくしいのよ、こんなに!
ほら、うつくしいでしょう。
かわいそうだね。
*
最近、遅刻してばかりだ。
偶然、友だちも逆方向のバスに乗ってしまっていたりして、同じくらいの到着となり、ああほんとうによかったと心底安心したり。
約束を守れないのはいやだ。
いまも、もう、わたしは自分で調べて準備していた予定から大幅に遅れて駅にいる。
一度家を出たのに、すでに遅れているのに、身なりが気になって部屋まで戻り、かばんを、変えた。
変えていなければ、もうひとつ早い電車に乗れていたんじゃないかな。
どんどんダメになる。
結婚すらまともにつづけてもらえない。
わたしが不安定なせいで、自分のことしか面倒みられないせいで、世間は限度の範疇でしかやさしくしてくれない。
頼っちゃいけない。
だって、わたしはなんでもできてあたりまえの子なんだって。
そう見えちゃうから、そうしなくちゃいけないんだ。
みんなずるい。
みんなずるいよ。
だからおもう。
どうして、ひとのかたちなんてしているんだろう。
音になりたい、光のつぶてになりたい、朝になりたい、真夜中になりたい、魚のうろこになりたい、波しぶきになりたい、鼓動になりたい、体温になりたい、なにものでもないものになりたい、真空になりたい、声なんていらない。
かなわない、ないものねだりばかり、月から迎えなんてこない。
切り花になりたい。
一週間うつくしく咲いて、やがて濁った水と一緒に、ぬるぬるとした茎に触れないようつままれて、ああ、なんだいまのわたしはそうじゃないか、わたしは切り花だったじゃないか、そして腐ってしまったからもう飾っておけないよって言われているんじゃないか。
当然のことだよ。
不衛生だもの、見苦しいもの、うつくしくないもの。
役に立たないものは愛するしかないけれど、うつくしくないものに存在価値なんてない。