切り花になりたい。
小説を書くのも読み返すのもつらいとか。
ひとと会うのも話すのもしんどくてとか。
仕事は行けても結局ぐったりしてるとか。
ぜんぶ、いつか時間が、年月が、なんでもないことにしてくれるはず。
わたしちゃん程度の落ち込みなんて、そこらじゅうにあふれているでしょう。
それなのに、話せないんだ。
泣けないし、上を向けない。
人混みはずっと足元を見て、パーソナルスペースに人の足が必要以上に入ってこないように、適度な距離を置きながら進む。
満員電車はiPhoneの画面だけ見てる、画面の奥は底なし沼だよ。
もういいじゃない、とふいに。
がんばらなくていいよ、もう。
わたしたちは折れてしまいやすかっただけ。
すべてうつくしく語ればいい。
わたしちゃんたちは脆く繊細だ、感受性が豊かに過ぎるほど豊かで、誠実さこそが取り柄、不器用だけどまじめちゃん、星座のなまえを知っている、花のなまえを知っている、雨の匂い、夏の匂い、冬の匂い、土の匂い、好きなものは好き、嫌いなものは大嫌い、どうでもいいものはたくさん、大好きなものはめったにない、信じてしまったら裏切れない、ひとの悪意が苦手です、嫌われたくない小心者、八方美人、なんとなくわかる、わかってしまったりする、手のひらに神秘十字があります、物語が好きです、紙が文字が鉛筆が文章がことばが思いが、好きだよ、わたしちゃんはわたしちゃんのことをもっと好きになりたい。
そうね、わたしたちは切り花になりたいかな。