咲く
好きです。大好きです。
好きだったよ。大好きだった。
また、愛しいとおもえるかもしれない。
もう、愛しいとおもえなかった。
セックスで、感情を図るなんて、そんなことが可能なのね。
ああ、でもそんなわたしちゃんも、似たようなものかな。
わたしちゃんは、さびしさを埋めるために、ただやさしくされたくて、あの日、あなたに身をまかせてしまった。
あれは、からだを売ったのとおなじだった。
たとえそれが擬似的な安心感であっても、あのときはそうするしか自分の心を保つ術がなかった。
きみは、まだわたしのこと、なにも知らないじゃない。
それでも、大好きです。
きみが見ているわたし、きみが好きですと言ってくれるわたし、それはすっかりすっぽり猫かぶり。
きみはあのひととは違うね、とてもやさしくて、とても誠実。
だから、わたしたちは疑心暗鬼に陥ることなく、きみにあまえられた。
耳もとでささやかれる。
大好きです。
ああ、でもごめん、きみが好い てくれているわたしは、ほんとうのわたしのほんの3割程度、かわいい子ぶりっ子している、かよわい女の子を演じて心配してって寄りかかった。
会いにきてくれてありがとう。
大丈夫ですよって、言ってくれてありがとう。
ただ、抱きしめてくれてありがとう。
なにも聞かずにいてくれてありがとう。
好きなのに、きみに、好きって、言えなくてごめん。
好きって、ことばの意味はひとつきりじゃないのね。
残りの7割をきみに見せてなお、耳もとで、ささやいてもらえる自信がわたしたちにはないの。
咲いても、散ってしまうんだ。