きらめき、かなしみはつづかない。
まじめなのね。
わたしちゃんは心からの敬意を込めて、そういうところ好きよ、くちづけながら伝えた。
敬語で話していて、思わず一言、タメ口を発してしまったときの、はっとした表情とか(すごくかわいかった)。
仕事の話を聞いたとき、それまでの敬語会話から少し背筋も伸びて、お客さまとのやりとりを丁寧に説明する様とか(きっとこういう風に接客しているんだろうなあと容易に想像できるほど)。
きちんとしている、とてもよいこなのだろうなあという安心感、それからとにかく素直な物言い、きみはなかなか稀有な存在ね。
まじめちゃん。
言うと、そうなんですよ、眉を八の字に下げて残念そうにこたえた。
まじめなんです。
それで損しちゃうことがあるのね。
やや躊躇ってから、あります、わたしを心配させないようにいつだって口角を上げて見つめてくれるきみの顔がふいにかげって、それはこまった、わたしちゃんはきみの頭をなで、これ以外になぐさめてあげる方法を思いつけない自分の不甲斐なさを、ついで抱きしめることでごまかす。
だってわたしちゃんは、そんなきみの、何事にもやさしく誠実な態度でのぞむ性質がとてもとても好きだもの。
好きです、大好きです。
きみのことばは言の葉にのって、わたしちゃんのなかへ沁みわたる。
わたしたちはそれを、さみしさを埋めるのにつかってしまっているから、だから、うん、としかこたえられない。
それでも、きみはこれからも、きっといいこね、ときどきそのまじめさにため息ついてしまう日もあるだろうけれど、きみのまわりは、聞いているとやさしいひとたちばかり。
うらやましいなって、わたしちゃん。
またねー、と手をふって。
もう少し近くにいてもらえたら、とおもったけれど。
いまのわたしちゃんは、きみを傷つける気がして、きみのまっすぐさを台無しにしかねない気がして、遠くへ行かねばならないきみの明日からを、これでいいんだと平静をよそおった。
近ごろ、こころとからだが裏腹で、気持ちは特に揺れずにあるのに、体調はぐったりしてしまう。
ぐったりしてから、ああ、しまった、と気づくの繰り返し。
はやく元気になりたいなあ。
またねで別れたから、また会おうねのしるし。
泣くかなとおもったのに、いつもなら泣くのに、泣かなかったわたしちゃんは、やっぱりちょっと本調子じゃない。
おしごと、がんりましょー。
めももも
うっすら赤く色づいた実のなまえはヒペリカム。黄色い花が咲いたあと。
花言葉はきらめき、かなしみはつづかない。
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