小さなスイッチがひとつずつ
スイッチみたいなもの
小さなスイッチがたくさんあって
それが
ぜんぶONにならないように
止めてるの
きみは言うんだ
ぜんぶONにしちゃいましょうって
だって
遠くに行っちゃうじゃない
遠くに行っちゃうって知ったから
きっといま
わたしたちこうして一緒にいるの
わたしたちきみと会えてるの
こまったな
きのうより灯りがずっと明るい
もし
ぜんぶONにしてしまったら
じゃあまたいつかって別れた後で
ばちんと
ブレーカーが落ちるみたいに
わたしたち落ちてしまいそうで
だって
大泣きしてる
行かないでって無理を言って
きみを引き止めて
それはできないから
会うたび大泣きしてるよ
ぜんぶONにしちゃったら
そばにいて欲しい
なんて
思ってしまったが最期
しばらく素知らぬふりしていた
さみしいさみしいさみしい
さみしいを
思いだしてしまう
すでにそれに気づきはじて
わたしたちはきみの腕のなかで
苦しくなってしまった
やさしくしてくれて
安心させてくれて
なにも聞かずにいてくれて
会いに来てくれて
ぜんぶ
ぼくのわがままですから
謝るのはぼくの方です
ごめんなさい
なんて
どうして
わかってもらえなかったかなしみを
きみは
どうして
たった数時間で理解してしまうの
なにも話していないのに
ぼくがこうしたいから
すみません
なんて
ちょっと無理強いしすぎましたかね
なんて
いいこね
かわいくてもっと遊びたい
かわいがられてしまっていながら
そうされることに身をまかせて
小さなスイッチが
ぱちんぱちん
ぱちんと
ONに変わっていく
どうしようか
わたしたち
もうとっくに
寄りかかっちゃってるじゃん
きみといたら
世界の広さを少し取り戻した
すみれを見つけたんだ
毎日歩いていたのに
全然気づかなかったんだよ
小さなスイッチがひとつずつ
ぱちん
ぱちんと
わたしの知らないところで
勝手に灯りをつけていく