いつか あの日の走馬燈
おかしいな
なんだか夢見ているみたいなんだ
ほんとのことらしいんだけれど
ほんとのことだって
わたしちゃんも知っているんだけれど
なのに
夢見ているみたいなんだ
おかしいんだ
だって
こんなことって
わたしちゃんたちの人生に
起こりうるはずのないできごとで
わたしちゃんたちはずっと
ちいさいころからずっと
さみしくて
いつか
だれか
ただひとりきり
で
いいから
いつまでもそばにいてくれる
そんな
ひとを見つけられたら
いいなってずっと
おもって
いきてきて
これで
もうだいじょうぶ
もうひとりじゃない
わたしちゃんたちの不安やかなしみやさびしさは
みんなみんなこのひとが埋めてくれるって
胸は
ぽっかりあながあいてしまうと
途端に真空がきわまって
じわじわと潰れていくのを待つしかない
いったいだれが
わたしたちの心臓を
枝みたいに細く節だった指でつかんだきり
はなしてくれないんだろう
痛いっていってるのに
もう何十回も伝えているのに
どうしてやめてくれないんだろう
いなくなるくせに
いつまでも
つかんではなしてくれない
だから
これはきっと夢なんだと
わたしちゃんはおもいたくて
もしかしたら
もうしんでしまっていて
いまは
ながいながい
走馬燈をみているのかもしれない
と
そうなのよ、きっと
そうなのかもしれない
- 作者: ヤーコプ・ルートビッヒ・グリム,ビルヘルム・カール・グリム,スーザン・ジェファーズ,おおばみなこ
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