「朝行く月-02」楢﨑古都
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— ✿すいすい✿ (@kujiranoutauuta) 2020年2月7日
毎朝米を炊くようになって、三ヶ月が経つ。わたしは料理が得意な方ではない。というか、彼と出会うまでは米すらといだことがなかった。
地元で美容室を開いている母は昔から一切料理をしなかったし、ご飯は電子レンジで温めて食べるものだった。カップラーメンが一週間つづくことぐらいざらで、ホカ弁や店屋物のメニューは食べ尽くしていた。買ってきた惣菜をトレイから直接割り箸でつつくのが我が家の当たり前で、食卓にお茶碗とお椀が並ぶのは給食だけだと、小学生の頃まで本気で思っていた。
十代にも満たない頃だったと思うが、母が用事で夜家を空けたとき、近所の知人宅へ預けられたことがある。わたしはそこで夕食をご馳走になったのだが、まるで給食みたいな晩ご飯だった、と迎えにきた母に話したら、帰り道大笑いされた記憶がある。
中学校で調理実習があったときには同級生たちがテキパキと土鍋で白米を炊いてゆく様を、邪魔にならないよう隅に控えて見つめていた。獣数分ごとに火力を変えたり、吹きこぼれないよう一時もそばを離れることが許されないとは、なんて手間のかかる食材だろう、と息をもらした。自炊せず、冷凍食品で食卓を彩る母に共感してしまった。
食事なんて空腹が満たせればよく、味など二の次だった。大学へ入学し、学生食堂の日替わり定食を口にするようにもなったが、外食に慣れてしまった私の胃には、特別な感動がもたらされることもなかった。
今週のお題「卒業」