ねえ、あなたのためにあたし、生きていてあげようか。
このあいだの日曜日は、2012年公開の岩井俊二監督作品『ヴァンパイア』を
観てきた。しかも、岩井俊二監督の舞台挨拶付き……!!!!
「岩井俊二監督だああああ!!!!」という、めっちゃ平凡な感動とともに
あのウェーブ髪の監督をお迎えし、前のめりでお話を聞かせてもらってきた。
いろいろ聞いてみたかったけれど、緊張して質問できなかったなあ……
岩井俊二監督のおしゃべりは、ぽんぽんぽんっと寄り道をくり返しつつ、
まるで関係のない話題になっちゃった?と思った矢先、落語の枕のように
自然と話題は主題へと引き戻され、わたしってば もしかして、いままさに
監督の天性の才能の一角を目の当たりにしちゃってんじゃないかしらと、
最後の最後の最後まで、ただただドキがむねむねしまくりだった ٩꒰ ´ᆺ`꒱۶
監督曰く、「打ち上げ花火〜(ドラマ版)*2 」と『ヴァンパイア』の2作品がご本人の中では未だ最高傑作であり、
これを超える作品は撮れていない、とはっきり言い切られ……
さすがに会場がどよめいた。(大人の事情とか考えちゃった〻〻)
インターネットという無限に広がりつづける情報社会のなかで、
わたしたちは画一的なものの見方に引きずられがちだ。
殺人は悪いことだし、詐欺や盗作その他諸々、犯罪は侵してはならない
行為であることに間違いはないのだけれど、
背景にどんな物語があったのか、わたしたちはちっとも想像しない
インターネットやTVニュースで連日報道される無数の犯罪、
こんなひどいことをする奴は悪い奴に違いない、最低だ何を言われても仕方がない、
大衆はひとだび植えつけられたイメージから逃れる術そのものを失念している。
イソップ童話『かえると子ども』を例に挙げていた。
池に小石を投げる遊びをしていた子どもたちの前に、1匹のかえるが
あらわれる。きみたちにとってはただの遊びでも、わたしたちにとっては
生活をおびやかす大変危険な事態なのです。やめていただけませんか。
すると子供たちは石投げをやめて、お家へ帰っていきました、
といったような短い童話だったはず、とのこと。
実話を元にしたこの作品は、
まさに家族の背景を知りえない大衆であったわたしたちに、
報道された事件の裏側をフィクションとしてありあり描ききった。
映画にはフィクションであるという大前提がある、だからこそ
僕はまだ誰も気づいていない景色をつねに撮りたいと思っている。
感性には惹かれあうものが少なからずあると思うから、
お互いに見ず知らずのひとたちが、今日もこうして呼応しあって
再上映というかたちも成り立った。
見知らぬ背景を、観客のみなさんがそれぞれむしやむしゃ味わって、
味わってくれた受け手の数だけ作品は変貌する。だから、
なかには意図する答えとはまるで正反対の誤解した解釈を得るひともいて、
ちょっとした誤解から、答えらしい解釈とはまるで真逆の咀嚼をしたと
しても、そこには確かにもうひとつ確かな物語が成り立っているんだよ。
僕は、それはとてもいいと思う。
結末を観客の見解に委ねる作品もあるけれど、
僕の場合は最終的に一観客として納得のいく結末を求めて、
毎回作品を撮っているから、観終わったときに
「なるほどそうかあ」って満足感が自分でも欲しい。
(ここそこのシーンはどういう意味ですか? あのキャラクターは悪い奴ですか? そんな質問を受けたとき、監督はまず、 あなたはどう思いますか? と問い返す。 それから、それで正解です、と答える。 作品は公開された瞬間から観客のものになる)
でもやっぱり、不思議だよね。
僕らが思いもよらない誤解が、そのひとのなかでは物語として成立している。
いつか「誤解映画祭」なんてものが開けたら、すごくおもしろそうだよね。
無理してでも出向いてよかったと思える作品、そして時間だった。
おやすみなさい、せかい。
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