鉄塔
今日は、少しはやく帰ってきた。
早退じゃなくて、直帰。
ちょっとしたイレギュラーが発生して、16時過ぎに取引先までタクシーで向かい、どっさり書類渡して任務終了。
最初はレンタカー借りて往復もにゃもにゃな対応策検討していたから、免許もってないわたしちゃんには声かかることないでしょーもいもい定時までがんばりましょー(きのうから調子よくない)しかし暇だ……とか思っていたら、レンタカー借りるほどの書類移送は必要ないことが判明して、紙袋ひとつ、タクシーで運んで、そのまま帰っちゃっていいよーって。
ぶちょーさん鶴の一声。
ほえええええ。
きょう、半休で帰っちまおうか午前中逡巡していたから、定時前直帰とか、ひゃああああとなった。
結局、慣れてないタクシー移動(しかも一人)で、そわる自分。
はやく帰らせてもらえて助かりつつ、ひさびさに不安まみれたわー。
そんな帰り道の鉄塔。
たぶん、思いだしちゃったのもあるよね。
取引先近くのレストランへ、30才の誕生日、連れていってもらった。
あのとき、すごくうれしかったんだ。
無理言って、サプライズ演出してもらって。
普段そんなことしてくれないひとだったから、ギリギリまでぶちぶち言いつつ、ちゃんと予約してくれた。
半年くらい前から、30才だから! 節目だから! って、詰め寄って。
そうね、あのときがいちばんうれしかった。
どこへ向かうかも内緒にしてもらって、つぎはこっちって電車を乗り換えていくうち、なんとなく行き先はわかっちゃったんだけれど、それでもすごく楽しみで、思わず、楽しみだねーなんて口走ってしまった自分を覚えている。
小学生が遠足へ向かうわちゃわちゃ感そのもの、うざいくらい胸いっぱい。
帰り道が、まんまあの日のなぞりがきで、余計心臓が痛い。
次は、俗物であることを自覚している女の子の話が書きたいのに。
こんなわたしちゃんは必要ない。 邪魔。
鉄塔の写真は、すっからんと晴れた夏空バックに撮ろうと思っていた。
小雨はしっとりと町を濡らして、呼吸は楽だった。
あれは、そびえたつせかいの目印。
おやすみ、せかい。