自分勝手に自分自身を分析してみたところで、
自分勝手に自分自身を分析してみたところで、それはまるで的を射ていない偏ったものでしかないのかもしれないけれど。
かつて、未遂を起こして失明するのかもしれないとおもった十代のあのときの心境と、
気持ちではなんとか前を向こうとしているのに、身体がついてきてくれないいまとでは、
心持ちがまるで違う、ということだけは確かにわかる。
十代のころは、まだ親の庇護の元にあらねばならず、自分ひとりでは生きてゆくことができなかった。
どうしようにも彼らには頼らねばならなかった。
家という括りに心底追い詰められてしまっていた当時のわたしには、もはや己を失うという方法でしかそこから逃げだす手立てを思いつくことができなかった。
それも多いに幼稚な思考回路であったな。
わたしには、自己主張する勇気がなかったのだ。
幼少期から思春期に至るまで、ひたすら言い聞かせられて育ってしまったから、それを覆す本音など言い出せるはずもなかったといえばそれまでなんだろう。
それでも自己を確立し、確固たる道筋をみずから切り拓いていった友人たちは何人もいた。
わたしはつねに諦めていた。
あゝ、寒いな。びやびやするよ。
わたしはいま、なにがこんなにも苦しいのか。
一人では生きてゆけなかった十代の頃にくらべ、いまでは仕事もあり、よって月々の収入もあり、部屋を借りることができ、自分一人を食わせてゆくことくらいたやすい環境にいる。
給料は薄給であるし、決してやりたい仕事を日々こなしているわけでもない(恵まれたことに大変気安いゆるい職場だ)、住みたかった土地でもない。
でも、いまのわたしは、一人では生きてゆけない、なんて不安とは皆無なのだ。
わたしはいま、きちんと自分を食べさせ、養ってやることができている。
だから、あの頃とは多いに違う。
生きてゆく不安ではないのだ。
自分ひとりでは生きてはゆけないし、それならば亡くしてしまうしか方法がないじゃないかと、日がな今日こそは今日こそはと切に思いつめていたあの頃とはまるで違うのだ。
では、わたしはなにが、こんなにもくるしいのか。
ただ、抱きしめてほしかっただけ。
ただ、大丈夫だよって言ってほしかっただけ。
わかって欲しいなんて、そんなの望んでない。
だって違う人間だもの、そんなことできっこない。
ただ、抱きしめて、大丈夫だいじょうぶ。
ほら、だいじょうぶ。
泣いてもいいけど、そばにいるから。
ずっとこうしていてあげるから。
落ちつくまで、こうしていてあげるから。
わたしたちはいつもお願いしていた。
お願い、そばにいて、ぎゅってして、あと少し、あと少しこのままでいさせて、大丈夫って言って。
それは、わたしたちのわがままだった。
わたしたちはひとりでは生きていけなかった。
そばにいてよって、言ってはいけなかった。
おなじことばを、思わず言ってしまったら、年下の男の子ったら、あーもうお姉様かわいいなあ、ですって。
そして、めちゃくちゃ抱きしめてくれた。
わたしがそのやさしさに怯えて裾にしがみついたら、握ってる(笑)って手首をとった。
ごめんなさい、ちょっと急ぎすぎましたかね。でも、ちゅうはしてもいいですか。
わたしたちは断ることも受け入れることもできなくて、きっと両方の眉を下げて彼の目を見つめ返していた。
どっちか選べないって顔してますね。
くちづけられたくちびるはやわらかく、首すじは君の匂い、男の子くせにほのかに石鹸の匂いまでさせて。
ばかみたい。
そろそろ不安定にならざるを得ない時期だから仕方ないんだよ、落ちつけ落ちつけ。
お月様は満ち欠けするから趣があるの。
女心と秋の空、なんて一括りにまとめないでよね。
一雨ごとに春の来る。
思えば、いまとなにひとつ変わらない。
わたしちゃんたちは、ずっとひとりだった。
待つのはとてもつらかったし、待ちつづけて置き去りにされるのも、もう心がもたなかった。
家族になるって、居るのが当たり前になるってこと。
それってすてきね。
でも裏を返せば、それだけにもなってしまうのだと、わたしたちは一緒になるまで気づけなかった。
嫉妬しちゃいけなかった、どうしてとか、なんでとか、正しいらしいことを問いただしてはならなかった。
ねえ、びっくりだね、明日はもう木曜日で、友だちとご飯の約束があって、
金曜日はまた有休をもらう予定で、病院へ行くから今週のお仕事は明日まで。
一週間がはやい。
ひととご飯が食べられるのは精神的にとても安定する。
ほんの2週間だけれど、そばにいてくれたあの子が遠くへ行ってしまったら、わたしちゃんたちってば、案の定わかりやすくバランスを崩して、夜ご飯をまた吐くようになってしまった。
まだ4月一桁なのに(笑)
こうなってはつらいから、よりかからないように我慢したのにね。
そんなの無理か。
わたしちゃん、がんばってー。
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