わたしのなかの切実なもの
欲しいものすべてを手に入れるのは不可能なことなのかもしれないけれど、大抵のものは手に入らないような気がしてしまう。
どれかひとつを選んだら、どれかひとつは諦めねばならず、諦めるという不条理に、なぜうまくいかないのだろうと憤ったり、ふさぎこんだりする。
となりの芝生なんて、しょっちゅう覗きこんでいる。
きらきらしているお庭をお持ちの方々は、自ら門扉を開いて、どうぞどうぞご覧になっていってくださいな、わたしちゃんは尻込みして、いいえ結構です。
いまのご時世、ご近所さんでもなんでもない、うつくしい人々のテリトリーを垣間見ることなんて大いに容易く、もはや日常茶飯事。
それらは一様に完璧な表層だけをすくいあげ飾って見せているに違いないのに。
もしかしたらあの扉の向こう側では日々怒号が飛び交っているかもしれない、はたまた無言であるかもしれない。
わけわかんなくなるくらい大勢の人々、それぞれの生活がそこかしこに隠れている。
知ることの深さは
愛することへの道
結婚式へ参加することができなかった。
出かけてゆくことができない、というのは甘えではないのか。
もし、わたしが何も知らないただの人であったら、わたしのような人間を罵るのではないか。
わたしたちはめぐまれているな。
守ってくれる人がいて、何も聞かず、話を聞いてくれる人がいて、大丈夫だよと抱きしめてくれる人がいた。
だいじょうぶ。
大丈夫ですよ。
うん、いいよ。