日本酒は二合まで
この程度のことで、落ち込んじゃいけなかったんだ。
だれと遊びにいってるのかとか、連絡ないまま夕飯の時間を過ぎるとか、そういうのぜんぶ、
教えてもらえなくても毅然と立ち居振る舞いつづけなくちゃいけなかった。
一緒にいられる時間は、自分の都合なんてうっちゃって、全力で一緒にすごさなくちゃならなかったんだ。
理解できないとか、そもそも思っちゃいけなかった。
わたしは求めたんだ。
期待なんてしちゃいけないのに。
ふつうなんて、求めちゃいけなかったのに。
わたしのふつうは彼を苦しめて、
彼のふつうはわたしを苦しめた。
だから、合わないって言われるんだ。
もう無理だって。
どうしてなんて、考えちゃいけないし、聞くなんてもってのほかだった。
だって、スイソちゃんだけが、相手を自分より大切な存在だって思っていた。
相手は自分がいちばんだった。
そんなの、一緒になっちゃいけない。
スイソちゃんが求めていた家族のしあわせなんて得られない。
ずっとそうだったじゃないか、知ってたじゃないか、それなのに、どうしてまだ期待しようとするの、ほかの女の子に、自分がもらえなかった思いやりを与えられることがつらいから? きっとそうだね、自分じゃなかったことが、つらいね。
変わらないじゃないか、ここにいてもずっとひとりだった。
場所が変わるだけだよ、かなしいね。
それでも、ほんとうにひとりになるのはほんとうに怖い。
どうしてって、だから聞いちゃだめなんだってばばか。
- アーティスト: 辻井伸行
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ありがちではあるけれど、音楽はやがて聴こえてくる。