「朝行く月-06(2)」楢﨑古都
朝行く月-06(2)|楢﨑古都@kujiranoutauuta #note #熟成下書きhttps://t.co/AsglCbKrxF
— ✿すいすい✿ (@kujiranoutauuta) 2020年2月15日
二個目を手に取り、かぶりつく。寝癖は睫毛にもできるものだろうか。視線を落としても、上向きの毛先が伸びている。女の私が持っていないものを、ずいぶんたくさん持っている人だ。
「そういえば、立花さんと同じ名前なんだよね。話したっけ」
「知らない、そうなの?」
「うん、字は違うんだけとね。加えるに代返の代に子どもの子で加代子」
「ほかにもっとましな表現の仕方があるでしょう」
言うと、エビフライはマネしないでね、と本気のまなざしを向けられた。
彼は周囲に、私たちがなんとひやかされているか知っているのだろうか。通い妻を義務化しているわけじゃない。ママ代わりなんて、まっぴらだ。
「順平ってさあ、もしかしてマザコン?」
首をかしげて、顔を覗き込んだ。
「あのなあ」
横から蹴ってこようとするのを避けて、浮かせた足で仕返した。はずすだろうと思っていたのに、まんまと向こう脛に入ってしまい、平謝りした。痛がるのを苦笑いで茶化し、焦りをごまかした。
「ごめん」
結局わたしは、彼に謝ってばかりいるのだ。