「朝行く月-01」楢﨑古都
朝行く月-01|楢﨑古都@kujiranoutauuta #note #熟成下書きhttps://t.co/ogQm2gcfgu
— ✿すいすい✿ (@kujiranoutauuta) 2020年2月6日
息を詰めて右手を浸した。数千の米粒が冷水に溺れている。つき餅を返すように手の腹をまわし入れ、こすり合わせる。白く濁った水を慎重に排水溝へと注ぎ、蛇口をひねる。指先の感覚が流れにさらされ遠くなっていく。空気に触れ、ボウルに添えた手が一層かじかんだ。
何度か水を換えとぎ終えると、釜に移し三合目まで水を張った。水滴を拭い、炊飯器に収める。炊き上がりを二時間後に設定して、蓋を閉じた。
まくっていた寝巻きの袖を下ろすと、肌がぬくもりに安堵して身ぶるいした。
外は、まだ明けてもいない。カーテンを少し開け、曇った窓ガラスをなでる。結露が数本の線となって表面を垂れた。覗いた先の下端でオリオン座が瞬いている。カーディガンを羽織り直し、わたしはカーディガンを羽織り直し、再び布団へ戻った。