のまれる。
川を見にいった。
あれはこわいものだ。
二級河川か小川のような用水路しか見てこなかった。
あれはわたしを、わたしたちをあっというまにのみこんでしまう。
それがあぶないことなのか、身を任せてかまわないものなのか、わからない。
あんなに大きなものを、見たことがない。
抱えきれないほどの存在感が、河口へ向かって一同に流れていく。
逆らえない。
のみこまれてしまう。
こわい。
川へたどりつく道は幹線道路で遮られていて、道路にはなにやら目に見えない空気の層のようなものが横たわっていた。
それは単純に排気ガスによる重たさ暗さだったのかもしれない。
とにかく、こちら側とあちら側とを少し長い信号待ちの横断歩道が渡していた。
わたしは少しはやくなってしまっている鼓動を抑えるために、わざと浅くはやい呼吸をくり返す。
どうどうといく流れ以外、何物も微動だにすることなく飴色から群青に暮れていく空と町並みは、
幹線道路を渡ってこちら側へ戻ってくると、街灯にも看板にも道端の鉢植えにもそこかしこすべてのものが生きているのだと感じた。
どうせ、ただの思い込みだ。
あちら側にだって、ひとは大勢暮らしているし、わたしはこれからあちら側で暮らしてみようかと思案している。
はじめて目の当たりにしたあの大きな流れ、自分なんてちっぽけですらない太古からの迫力、あれは場そのものだった。
わたしたちは、のみこまれてみるのか。
あれはこわいものだ。