あなたはもう忘れたかしら
わたし、こわれてしまおうとしているのか。
こわれてしまえば、否応なしに近親がわたしをここから連れだすだろう。
心臓はぎゅっとなるけれど、我慢できないほどの痛みじゃない。
なみだはふいにあふれてくるけれど、玄関入るまではこぼさないでいられる。
おいしい食事をおいしいとおもえるし、そのことはしあわせなことだから頬がゆるむ。
毛布はあたたかいし、暖房をかけて二度寝する朝の10分間はきっとみんなに等しくある。
そういうことがみんなつらくなって、でも楽しかったりうれしかったりして、だれも乗っていないのに大きく弧を描く、やがて鎖が不規則にぶれて、それでも揺れてお化けが乗ってるなんて言われてしまうブランコみたい。
承認欲求っておぞましいな。
そんじょそこらのそれでは満たされなかった。
培ってきてしまったものは、どうしようもないな、これがわたしなのだった。
受け入れてくれだなんて、おこがましいにもほどがあった。
かなしいだなんて、おもってはいけなかった。
それなのに。
「神田川」の歌詞の意味がずっとわからなかったんだよ。
ただ、あなたのやさしさがこわかっただなんて。*1
どうしてかな、いまならそれが少しわかってしまうような気がするの。
ぜんぶわかってしまったら、わたしきっと、そのとき泣いて笑うんだとおもう。