かなしくなったら、魚の気持ち

生まれ変わったら一頭のくじらになりたくて できれば水素原子くらいちいさくなりたくて かなうなら素数のひとつに仲間入りしたくて ひとだからさきおとといのことを後悔します おやすみはにー♭ 【Yoga Alliance US Teacher Training 200 修了(First class)】

占いで相性よかったことなんて一度もないし信じないけど(楢﨑古都)

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うたの日 短歌 2020-0021

 

  占いで相性よかったことなんて一度もないし信じないけど
  くたびれたトレーナーはねてる寝癖 火曜5限のあいつの背中
  凛々しさを分けておくれよ野良の猫 猫撫で声のあの子に勝ちたい

 

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じゅんわりと沁みゆく朝を幸福と呼べば焼き立てパンの行列(楢﨑古都)

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うたの日 短歌 2020-0020


  とりどりのマスクの下じゃ誰彼も、ほら変顔の練習中だ
  公園を横切るあの仔もさもさで目付きの悪いいつものグレー
  じゅんわりと沁みゆく朝を幸福と呼べば焼き立てパンの行列

 

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いつでも焼きたて! すごい! 作りおきパン (TJMOOK)

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人知れず咲く花もまたあるだらう霞の地にも春は等しく(楢﨑古都)

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うたの日 短歌 2020-0019


  衛星が夜を横切るただしづかそれだけのこと思ひ澄ませば
  彼方より歌う呼び声葬列のいちばん後ろまた会ふ日まで
  人知れず咲く花もまたあるだらう霞の地にも春は等しく

 

お題「思い出の一枚」

 

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星と神話 物語で親しむ星の世界

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最果てに季節はめぐり端々に世界を染める鱗粉の舞う(楢﨑古都)

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うたの日 短歌 2020-0018

 

最果てに季節はめぐり端々に世界を染める鱗粉の舞う
春の色 萌黄、若草、薄縹 子らの戯れ、母の眼差し
通り雨駆けるけるわたしにきみは言う「濡れるの別に嫌いじゃないんよ」

 

今週のお題「ホワイトデー」

 

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蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫)

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一輪の栞を綴じて返しますあなたはきつと気づかないから(楢﨑古都)

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うたの日 短歌 2020-0017

 

   好きだった青空だった冬だった永遠なんてことば信じて

  一輪の栞を綴じて返しますあなたはきつと気づかないから

  結び瘤ほどけないやうきつくして来世もきつと会へますやうに

 

今週のお題「卒業」

 

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春風がスタッカートでやってきて八分休符でつぼみほどけた(楢﨑古都)

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うたの日 短歌 2020-0016


  梅ふふみ菊桃ひらき花咲かむあたたかき午後山辺に来たる

  羽化を待つ妖精たちは春告げるミモザの褥ひめやか眠る

  春風がスタッカートでやってきて八分休符でつぼみほどけた

 

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春風

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「朝行く月-08(1)(終)」楢﨑古都

 目覚めたのは夕暮れだった。CDラックを片付け、一息ついたところで、私まで寝込んでしまったらしい。立ち上がろうとすると、テーブルに突っ伏していたために、体中の関節が動作ごと悲鳴をあげた。眠い目をこすりながら、痛いのを我慢して背伸びする。
 暖房で空気は乾燥し、喉はからからに渇いていた。彼の方はとふり返ると、途中で起きたのか床に置いたペットボトルの中身が三分の一ほど減っていた。氷はすっかり溶け、水枕になっていた。
 買ってきた氷をもう一袋冷凍庫から出し、起こさないようそっと重い頭を持ち上げる。呼吸はもう、ずいぶん安定したようだった。
 枕元の居住まいを正そうと、彼は寝返りを打った。夏から伸びっぱなしの前髪が額に落ちる。毛先がまぶたをつつくのか、眉間にしわを寄せて鼻を鳴らした。よけてやろうと伸ばした手のひらへ、彼の熱い吐息がかかった。湿った体温が空気を伝う。高鳴る心臓にこぶしをあてた。
 ふと見渡したテーブル上に、さっき薬の中袋をあけるのに使ったはさみが出しっぱなしになっているのが目についた。私は一直線にそれを掴み、眠っている彼の上へ構えた。造作なく、左手は彼の前髪を握りしめていた。
 はさみは一切りで彼と私とのつながりを裁った。
 無残に切り落とされた前髪が、額にいびつな散切りを描く。手の中の髪の毛をコートのポケットにつっこむと、私は慌てて部屋を飛び出した。
 駆けながら、出掛けにひっつかんだマフラーの裾が地面を擦っていた。並木道の枯れ葉に足を取られ、転びかけると靴が脱げた。
 いったい、私は何をしているのだろう。息せき切って、いったい何をふり払おうとしているのだろう。屈み、踵に指を入れて靴を履きなおしたとき、私は自分の手が手ぶらであることに気が付いた。手提げかばんを、彼の部屋に忘れてきてしまった。
 駆けてきた道を焦点定まらず呆然と見つめ、立ち尽くす。喉は締めつけられたように浅い呼吸をくり返すばかりで、いくら吸い込んでも肺は酸素を取り入れてくれなかった。
 ポケットの中、ばらばらになってしまった彼の髪を握り集めて、はっとした。空が、明けてきている。私は本の数時間居眠りしてしまったのではなく、一晩あの部屋で眠りこけてしまっていたのだ。
 米をとぐのに深爪した指先が、いまさらじんと痛んだ。
 手に力が入らない。とどめておきたい気持ちとは裏腹に、髪の毛が指の隙間からはらり、はらりと風に散った。目をそらすと、朝に残った半月が、白く吐く息に消された。


 2005年05月27日 原稿用紙:33枚

「江古田文人会・第八号」掲載
「第22回日大文芸賞・優秀賞」受賞作

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「朝行く月/水に咲く花」

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